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読書メモ: ツイッターノミクス TwitterNomics

ツイッターノミクス TwitterNomics

ツイッターノミクス TwitterNomics

これはツイッターのマニュアル本ではない。
数あるウェブサービスの中からツイッターだけを取り上げて、そこだけに焦点を当てた本ではない。
この本は、ツイッターに代表される次世代型ソーシャルネットワークサービスの荒波の中にこぎ出そうとする、大いなる野心と旺盛な好奇心、そして少しの不安を抱えた企業とエンドユーザーのために書かれた指南書である。

エンドユーザーひとりひとりが発言する力とチャンスを与えられ、その発言同士が有機的に、そして瞬く間にリンクし、情報が伝播していく現代のウェブの潮流の中で、いかにして一目置かれる存在になるか。いかにして自社の評判/評価を上げるか。その方法とコツを著者の豊富な経験を紹介しながら、実践的に解き明かすこと。それがこの本の主題である。

「指南書」と言ってはみたものの、実際にはそれほど大げさなものでもない。

オンラインにおける評価とコミュニティに対する貢献度、という絶対的な計測が困難な要素を架空の通貨単位「ウッフィー」の増減に換言して読み解く、という大胆な舞台設定は、慣れるまでに多少の時間がいるが、一旦その枠組みが見えると、あることに気づかされる。

事細かくリストアップされた、ウッフィーの増減を左右するとされる「やっていいこと/悪いこと」の数々は、オンラインのソーシャルネットワークにおける評価だけに通用するルールブックではない、ということだ。これは、リアルの世界で人と効率的に気持ちよくコミュニケーションをとるために必要なこととにそのまま応用できる。いや、逆だ。リアルの世界で形成されてきたスムースなコミュニケーションにとって必要な決まり事は、オンラインのソーシャルネットワークにおいても、その力を発揮する、と言うべきだろう。その前提をふまえつつ、新しいメディアの特徴にスマートにフィットするようなほんの少しの応用力が必要だとして、著者はオンラインに展開される様々なツールやサービスを具体例を引き合いに出しながら、それぞれのエキサイティングなストーリーを紹介してくれる。

読者は、それらをベースにしてどのツールが自分にあっているか、そのツールはどのように使えば効率的にウッフィーを増やすことができるか、を思案し始めることになるだろう。その中のひとつの可能性としてツイッターが取り上げられているだけであって、そのほかにもフェイスブックやブログなど、それぞれの特性をふまえた展開方法も本書には盛り込まれている。

果たして自分はどれほどのウッフィーを得られているのだろうか。
我が社の製品はユーザーにどのように受け止められているのだろうか。

そんな不安を「不安」のままにしたくない人たちのためにこの本は数多くのヒントを用意してくれている。

追記1:
今回この本を読む機会を得られたのは、文藝春秋による「レビュアー募集企画」第一弾にて、先着100名に滑り込めたおかげ。
文藝春秋: ツイッターノミクス公式サイト - レビュアー募集
たまたま津田さんのツイートが目に入って、これは!と思い急いで応募。結果なんとか100名に入れてくれたらしく、発売日前に届いた本を読ませていただいた。そしてこのレビューを書いているという次第。

追記2:
冒頭にも書いたとおり、この邦題「ツイッターノミクス」が読む前の人たちの中で誤解を生んでいなければいいが、と心配になってしまう。内容的にも、取り上げられる具体例という点でも、大らかな広がりを持つ本書が、特定のツールを連想させる言葉選びの結果として、潜在的購買層をみすみす逃してしまってはいないだろうか。