思い出
告別式から一週間が経った。
あの日、式場に向かう電車の中で、これから向き合わなければならない現実を想像するだけで呼吸が苦しくなり、首筋や脇の下に汗がつたい流れた。
彼の曲からしてみれば矛盾する言い方になるけれど、式場ではKAGAMIくんの曲が静かに流れていて、ロビーには彼の作品の数々がディスプレイされていた。
ずっと会っていなかった、昔お世話になった人たちに会った。
こんなかたちで、こんな場所で再会しなければならなくなったことを心の底から悔しく思った。
元々小柄だった彼のからだが、棺の中でさらに小さくなっているようにかんじた。
手を合わせて「おつかれさまでした」と声をかけた。
なんと言って声をかけようか、ずっと考えていたけど、それしか思いつかなかった。
アムステルダムでのDJ。
私が日付を一日間違えて諸々手配してしまい、その晩はパーティが行われていないクラブへ彼を送り込んでしまったことがある。
こっぴどく怒られて当然のとんでもない凡ミス。
その日、現地の彼から電話がかかってきて、呆れて笑いながら「これは僕らだけの内緒の話にしておこう」と言ってくれた。
台北でのライブに同行。
二人で食事をしに出かけて、入った鍋料理店。鍋が真ん中で分かれている、火鍋ってやつで、
辛いのが好きな私と苦手な彼との間で意見があわず。
彼はひとりぶーぶー言って結局ほとんど食べなかったっけ。
WIRE GIGSリリース。
深夜のゲームセンターでのPV撮影、凝りまくったジャケットのアートワークなどなど、
彼のアイディアがふんだんに盛り込まれた意欲的なプロジェクトだった。
ジャケットに記載されるクレジットの内容チェックの段になって、我々スタッフのことを気遣い、
「こんなにみんながんばってくれてるんだから、×××君や○○○君(担当スタッフの名前)のロゴマークをつくって、それを載せたいぐらいだよ」と話してくれた。
この一週間ずっと、棺の中に横たわる彼の顔を思い出さない日はなかった。
この一週間ずっと、まともに音楽が聴けず、耳にしたのは少量のバッハだけ。
昨日の朝、やっといろいろ聴けそうになってきたので、職場に向かう電車の中で、くるりの「ブレーメン」を聴いたら、また泣けてきた。
ここに改めて心からの感謝と哀悼の意を表します。
ありがとう、そして、さようなら、KAGAMIくん。